「モジャ!」 season2 第一回
 白モジャ


嘘だろ?マジで?なんも言えねぇ北島康介チョー気持ちいい。
続いて横文字。オーマイガァッー。アンビリーバボー。ホワイ?ニッポン人、ホワイ?
これじゃ、帯にも襷にも短し、だよねだよね、命短シ恋セヨ乙女。
驚異、驚愕、吃驚、喫驚、衝撃、激震、仰天。んー、次行ってみよう、四文字熟語で。驚天動地。震天駭地。天変地異。そういや青天の霹靂という名前のお米もあるね。青森の青。
あなたってさ、言ってることは正しいんだけど、ぜんっぜんっ、刺さらないのよ。
おいおい、そんな身も蓋もないこと言わないでって思うけど、あと、その小さい“っ“の重ね出しはやめろって思うけど、それがあんまり真実過ぎて、青く浮き出た血管から吹き出すのは僕の血潮。そう、僕らはみんな生きている。ミミズだって、オケラだって、って、オケラってなんだ?

脳内彼女が求めているのは、新・指導要綱に基づいた、取扱説明書やメールの正しい書き方を学ぶための国定教科書の文体ではなく、伊勢物語の昔から、和歌となり、俳句となり、詩吟となり、歌謡曲となり、ポップソングとなり、ロックとなり、ラップとなり、ピロートークとなってきた歌たちだった。つまり、たった一つの声だった。
そんなこと言われちまったら、悲しみだって汚れちまうね。
こちとら、君の心を貫くマシンガンは持ってないから、同じ言葉を腱鞘炎になるまで連射する。見せておくれよ、君の握った手の中を。勇気なんていらないよ。
驚驚驚驚驚驚驚驚驚驚驚驚怒驚驚驚驚驚驚驚驚驚笑驚驚驚驚驚驚。

いや違う、漢字って時点で、もう違うね、全然。だってやっぱり、漢字って、なんか儒教っぽいじゃん。我が闘争、ならぬ逃走。ライ麦畑でつかまえないで。あー、目がチカチカしてくるね、脳がクラリとしてくるね。そうやって、我々庶民の思考力を奪おうとしてない?
資本主義がもたらすもの。それは、最新型の阿片とつくり笑顔である。
ええええええええええええええええええええー?あー、うぉ、うううううーぎゃー、ぐぉ、げげげげ、とぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ。ん、んんんんんんん、あー、
ふぅ。だいぶ、いい感じになってきた、近くなってきた、今の俺の気持ちに。いや、内臓の蠢きに。ていうか、腹わたのウネリとマリネに。

え、さっきから全然、意味わかんない?ああ、うん、そうそう、そうなんだ。でも、それが俺のやりたかったことなんだ。だって、言葉で表現できないことってたくさんあるよね。それでも、言葉で伝えるしかないから、こうやって、えええええおおわわわ、って言ってみてる。実験してるんだよ今日も遊び半分でリアルよりリアリティへの道行を。
やっぱり最後の最後に頼りになるのは、平仮名だよね。いとおかし。いや、つまり、そういうこと。俺、メチャクチャ驚いてんのよ、って、ぎょぎょぎょ。
あー、そう、今不意に出てきたこの、ぎょぎょぎょ。

ズバリこれだよ、俺の言いたかったことは。みんながみんな、さかなクンになればいい。怪物くんや、恐竜くんや、なかやまきんに君になればいい。そうすりゃ世界平和がやってくる。
朝起きて、顔を洗おうと思って鏡を見たら、自慢のモジャが、全部白髪になっていた。
え、ショックだったか、って?
いや、だからさ、ショックなんかじゃないよ、ただ、ぎょぎょぎょ、だったんだ。
それはそれは、風流な眺めだったよ。何しろ、一晩で山頂に雪がかかった富士山みたいなモジャ。ヤッホーと言いかけて、「なんじゃこりゃ」ってって吠えたんだ、太陽に向かって。(続)


lyric:ミフキ・アバーチ  photo:サマーカーター・トゥーイ  starring:ウーコ・カオターカ